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SVE SMO MOGLI MI
スヴェ スモ モグリ ミ(一日がもっと長ければ)制作秘話


前回に続き、「SVE SMO MOGLI MIスヴェ スモ モグリ ミ」(邦題 一日がもっと長ければ)について
お話しようと思います。

この作品はヤドランカの代表曲のひとつですが、
意外なことに作詞も作曲も彼女本人ではありません。

どういう経緯でヤドランカが歌うことになったのでしょう…

ヤドランカの友人でバルカン音楽事情にも詳しい研究者の山崎信一さんが
この曲の作詞家ヴァレリヤン・ジュヨ氏のインタビュー記事
「Sve smo mogli mi(スヴェスモモグリミ)は、どのように生まれたか?」
をみつけ訳してくださいました。
http://media.ba/bs/magazin-novinarstvo/kako-je-nastala-pjesma-sve-smo-mogli-mi

要約すると…

作曲は、1970年代のサラエヴォの音楽界で活躍していたジャルコ・シプカ。
(1992年サラエヴォで逝去)
作詞は、ボスニアの有名な作家ヴァレリヤン・ジュヨ。
ヴァレリヤンはインタビューで次のように語っています。

  70年代初頭のある日 親友の作曲家ジャルコ・シプカと一緒に、
ジジコヴァツの坂を歩いていると、ギターケースを持ったヤドランカと出くわしました。

三人で何気ない会話を交わす中、ヤツァ(ヤドランカの愛称)は、
シングルレコードのB面用の曲が明日までに必要だと言いました。
するとジャルコは、ヤドランカに間髪入れずにこう言ったのです。

「君のための作品があるんだ」

ヤドランカと別れジャルコの家に着くと
彼は心地良いメロディーを口ずさみながら、紙とペンを持ってきて私に言いました。

「さあ、詞を書いてくれ。時間がないんだ」

詞なんてそう簡単にできるもんじゃない。
抵抗しても、ジャルコは構うことなく同じメロディーをラ・ラ・ラとかナ・ナ・ナと歌っています。

2、3時間の苦痛と、2、3杯のワインの後、
ようやく私は作詞に取り掛かりました。

私は先ず紙に、音節やアクセントを表す記号の集まりを書き記しました。
しかし、まだ一つの単語すら浮かんでいません。曲のストーリーなど言わずもがな。

わかっていたのは、
リリカルでノスタルジックなものでなければならない。
ヤドランカに合うものでなければならない。
そして、すでに出来上がっている曲に合うものでなければならないということだけ。

やがて出来上がった作品はレコーディングされ、予想に反して大ヒットしたのはご存じの通り。

私はこの「Sve smo mogli miスヴェスモモグリミ」を、
海岸で、誕生日に、遠足で、酒場で、高級クラブで、列車の中で…あらゆるところで数えきれぬほど耳にしてきました。
昨年の夏、ウィルソン公園で少年少女たちが心を込めて演奏し、歌っているのも聴いています。

私はこの詞を書くことに愛情など全く持たなかった。
ただ職人が仕事をするように、単語を音節やアクセントに当てはめて作っただけ。
こんな話は、もしかすると少年少女たちには、皮肉やひねくれたものに感じられ曲の雰囲気を壊してしまうかもしれませんね。


以上が記事の訳をまとめたもの。

  

ヴァレリヤンはインタビューで
「この詞を書くことに愛情など全く持たなかった」と語っています。

でも詞を書く者は自身の感情に陶酔してはいけないし、
詞を客観的に俯瞰してみることはとても大事なこと。

ヴァレリヤンに思い入れの強さがなかったからこそ、彼の詞が美しいメロディと共に
聴く人の想像力を喚起し、感動させたのかもしれません。


 



わたしたちにできないことはなかった
もしも一日がもっと長ければ
もしも あなたがわたしに時間を少しくれていたら

わたしたちにできないことはなかった
もしも あなたが
あの日のようにやさしくしてくれていたら…
 

(対訳 三谷惠子さん)


追悼盤「Hvalaフヴァーラ 〜ありがとうヤドランカ・ベスト」にはアルバム「音色」から
「一日がもっと長ければ(Sve smo mogli miスヴェスモモグリミ)」を収録。

  

作品は鬼怒無月さんの繊細なギターが、
ヤドランカの声にやさしく、せつなく、そして密やかに寄り添います。
ヤドランカのアドリブや自由な歌い方に対応できるギタリストはそうはいません。

アレンジも鬼怒さん。
ラブソングですが、シンプルで大人の為の子守歌のように仕上がっています。
ヤドランカを知り尽くしている彼ならではの高い完成度です。

  

  

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