この絵はアルバム「Hvalaフヴァーラ」にも収録されている「Što te nemaシュトテネーマ」を テーマに描かれたもの。
ヤドランカはボサンチッツア(中世クロアチア語で使用されたキリル文字)をアレンジした
彼女独特のレタリングでその歌詞を書いています。
文字自体それだけで絵画のようです。
描かれているのはサラエボ旧市街で最も有名なモスク
“ガーズィー・フスレヴ・ベゴヴァ・ジャミア“の中庭にあるシャドルヴァンです。
「Šadrvan シャドルヴァン」とは 泉・噴水もしくは水飲み場という意味です。
実際の用途は手を清めるためのもので、モスクや宿屋などの前にあることが多いようです。
清めの泉とでも言いましょうか。
日本の神社やお寺にある「手水舎」(ちょうずしゃ)にあたります。
サラエボの旧市街バッシュチャルシア広場にある「Sebilj セビリ」と呼ばれるシャドルヴァンも また有名です。
セビリというのは実はアラビア語起源、シャドルヴァンはペルシャ語起源で、
供に「泉・水飲み場」という意味なのだとか。
ところでこのシャドルヴァンは、「Što te nemaシュトテネーマ」の歌詞では シャドルヴァーナとなっています。
どういうことかというと
歌詞の「BISTRA VODA ŠADRVANA」は、「シャドルヴァンの きれいな水」という意味。
男性名詞である「ŠADRVAN」の属格(生格、所有格ともいう)はおしまいに「-a」がつくので
「シャドルヴァン」が「シャドルバンの」に格変化すると
「ŠADRVAN 」→「ŠADRVANA」になるのです。
ちなみにセルビア・クロアチア語は格変化が7格まであるそうです。
ヤドランカの追悼アルバム「Hvala フヴァーラ 〜ありがとう ヤドランカ・ベスト」の ブックレットには冒頭の絵の他に、画家でもあった彼女の遺した絵画作品も多数掲載されています。
音楽と共にヤドランカの絵も楽しんでいただけますように…
ヤドランカにとって、絵を描くことは音楽と同じくらい夢中になれるものでした。
絵を描くことで、波乱に満ちたその人生が救われていたように思えます。
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